廣木隆一

　廣木隆一は映画監督だけでなく、脚本家や、俳優としても活動するマルチな才能の人物で、日活ロマンポルノ映画作品を数多く手がけたことと、その独特の空間描写や映像表現から、次第にピンク映画以外も撮影するようになっていった監督です。元々はアメリカン・ニューシネマの影響を受けていた事もあり、アテネフランセの映画技術美学レッスンで学んでいたそうです。

　昭和57年に、ピンク映画作品の『性虐!女を暴く』でデビューを果たし、シティ派の異名をとるなどと好評を得て、その後、平成6年には、米俳優ロバート・レッドフォードが主催している新人育成の世界的登竜門であるサンダンス映画祭の奨学金を獲得し渡米しています。更に、平成15年には、寺島しのぶが31歳の女性ルポライターを演じる『ヴァイブレータ』において数々の映画賞を受賞し、低予算であリながらも、自然な演技と映像美で見せた魂の入った一作となっていました。また、そう言った評価からか、現在は海外での人気が高まっており、特集上映を組まれたりと、引っ張りだこになっています。現在はピンク映画だけでなく、恋愛映画なども数多く撮影しており、最近ではストロボ・エッジ等の人気少女マンガシリーズの実写映画を務めるなどと、愛を描かせたら右に出るものはいないと断言できるほどの実力監督となっています。

最近の作品とその傾向

　最近は甥の一生やストロボ・エッジ、そして軽蔑といった話題の原作付きの作品を映像化することが非常に多いです。特に100回泣くことという映画では、恋愛映画の名手として抜擢され、脚本がソラニンの高橋泉であったこともあってか非常に良い印象の評価を受けておりました。軽蔑ではこれまでには無かったような男女の形や機微などを真摯に見つめ描いていくという姿勢とともに、その映像表現などが話題を呼び、第26回 高崎映画祭並びに様々な賞を受賞しております。特に本作雷桜に至っては、初の時代劇作品であり、本人も「時代劇ではない時代劇を撮る」とその意気込みを語っています。実際にその目論見の通り、時代劇の中でのリアリティーがありながらも、一種のファンタジーを感じさせるような不思議なシナリオ展開があり、それがある意味では現在を舞台に置かないことによって、時代劇ならではのストレートな強さと、行動によって現れるリアルが描かれていたかと思われます。特にこれに関して監督は、電話やメールの無い時代の恋愛だからこそ行動がストレートであり、そこに面白さがあると語っており、二人の名優によってそれはイメージ以上に素晴らしい物へと昇華されて行っていると監督自身が語っております。

監督作品

• 昭和57年『性虐!女を暴く』
• 昭和58年『木又三郎君の事ぼくらの時代』
• 昭和58年『西川瀬里奈・覗き部屋の女』
• 昭和58年『ぼくらの季節』
• 昭和59年『白昼女子高生を犯す』
• 昭和59年『痴漢とスカート』
• 昭和59年『先生、私の体に火をつけないで』
• 昭和60年『やりんこチエ・いちじく診察台』
• 昭和60年『ぼくらの瞬間』
• 昭和61年『白衣調教』
• 昭和61年『禁断・生贄の女』
• 昭和61年『SM教室・失禁』
• 昭和61年『発情娘・ぐりぐり遊び』
• 昭和61年『盗撮マニア・FRIDAYの女』
• 昭和61年『ロマン子クラブ・エッチがいっぱい』
• 昭和62年『小林ひとみの本性』
• 昭和63年『菊池エリ・巨乳責め』
• 昭和63年『聖熟女』
• 平成元年『童貞物語4・ぼくもスキーに連れてって』
• 平成2年『さわこの恋上手な嘘の恋愛レッスン』
• 平成3年『ジ・ゴ・ロ』
• 平成4年『テンカウント』
• 平成5年『魔王窟・サディスティックシティ』*:ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭･ビデオ部門グランプリ
• 平成6年『夢魔』
• 平成6年『800TWOLAPRUNNERS』*:キネマ旬報ベスト・テン第7位・新人男優賞、ベルリン国際映画祭、文化庁優秀映画賞、芸術選奨新人賞、批評家大賞最優秀監督賞、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人俳優賞、高崎映画祭若手監督グランプリ
• 平成7年『君といつまでも』
• 平成8年『ゲレンデがとけるほど恋したい。』
• 平成8年『MIDORI』
• 平成9年『野良犬2匹に猫1匹』
• 平成11年『晴レタ日ニハ…』
• 平成11年『天使に見捨てられた夜』
• 平成12年『東京ゴミ女』*:ドーヴィル･アジア映画祭・最優秀作品賞、日本映画批評家大賞・監督賞
• 平成12年『不貞の季節』
• 平成13年『美脚迷路』
• 平成14年『理髪店主の悲しみ』
• 平成15年『刑事（デカ）まつり』
• 平成15年『ひと夏のパパへ』（TBS）
• 平成15年『ヴァイブレータ』:東京国際映画祭・優秀女優賞、マンハイム＆ハイデルベルク国際映画祭・特別賞、ナント三大陸映画祭・優秀主演女優賞、ヨコハマ映画祭・主演女優賞・助演男優賞・監督賞・脚本賞・作品賞、ドーヴィル国際映画祭・脚本賞、高崎映画祭・監督賞、シンガポール国際映画祭・審査員特別賞・最優秀女優賞、ブルーリボン賞・主演女優賞、キネマ旬報第3位・主演女優賞・新人女優賞・助演男優賞・脚本賞、日本映画批評家大賞・主演女優賞、エランドール賞・新人賞、藤本賞・特別賞
• 平成16年『組織車先生』
• 平成16年『4TEEN』（WOWOW）:文化庁芸術祭テレビ部門優秀賞
• 平成16年『終わらない歌』（BS-i）
• 平成17年『ガールフレンド』
• 平成17年femalebyJamFilms『太陽のみえる場所まで』
• 平成17年『L'amantラマン』
• 平成17年『ラン・スパイ・ラン』（BS-i）
• 平成18年『やわらかい生活』
• 平成18年ohanapresentsashortmovie『予感』
• 平成18年『恋する日曜日文學の唄』「新居」（BS-i）
• 平成18年『恋する日曜日LOVEONSUNDAY』
• 平成18年『ケータイ刑事銭形雷』（BS-i）
• 平成19年『M』
• 平成19年『恋する日曜日私。恋した』
• 平成19年『ケータイ刑事銭形海』（BS-i）
• 平成20年『縛師』（ドキュメンタリー）
• 平成20年『きみの友だち』:香港国際映画祭、ウディーネ極東映画祭、ヨコハマ映画祭・最優秀新人賞
• 平成20年『ニュー型ただ、愛のために』
• 平成21年『余命1ヶ月の花嫁』
• 平成21年『僕らは歩く、ただそれだけ』（Yahoo動画公開）劇場未公開作
• 平成22年『雷桜』
• 平成23年『軽蔑』
• 平成23年 こどものみらい いん ふくしま
• 平成24年 RIVER - 兼脚本・原案
• 平成25年 きいろいゾウ
• 平成25年 シネマ☆インパクト 海辺の町で
• 平成25年 だいじょうぶ3組
• 平成25年 100回泣くこと
• 平成27年 さよなら歌舞伎町
• 平成27年 娚の一生
• 平成27年 ストロボ・エッジ

出演作品

• 『いたいふたり』（監督/斉藤久志）
• 『火星のカノン』（監督/風間志織）
• 『さよならCOLOR』（監督/竹中直人）
• 『色即ぜねれいしょん』（監督/田口トモロヲ）